いつも完璧を目指す「ヒーロー型」のあなたへ——突然の怒りと絶望感の正体

「もっと頑張らなきゃ」
「このくらい、できて当たり前」
「まだまだ努力が足りない」
そんな言葉を、自分にかけ続けていませんか?

仕事では頼りにされる。
家では、家族のために動き続ける。
誰かに頼まれれば、期待以上の結果を出そうとする。

周りからは「しっかりしている人」「何でもできる人」と思われているかもしれません。

でも、ある日突然、
ほんの些細なひと言に、抑えきれないほど腹が立つ。

あるいは、
「もう、何もかもどうでもいい」
と、すべてを投げ出したくなる。

そして、そんな自分に驚いてしまう。

どうして、こんなに頑張っているのに、心は満たされないのでしょうか。

今回は、アダルトチルドレンの「ヒーロー型」について、3つの問いから考えていきます。

アダルトチルドレンの「ヒーロー型」とは?

ヒーロー型とは、子どもの頃の家庭の中で「優秀な子」「しっかりした子」という役割を担ってきた人を表す呼び方です。

勉強やスポーツでよい成績を取る。
親の期待に応える。
家族に心配をかけないように、何でも自分で頑張る。
そんな役割を通して、自分の居場所を守ろうとしてきた方もいます。

ただし、ヒーロー型は医学的な診断名ではありません。自分の生き方を理解するための、ひとつの手がかりです。

こんなことに心当たりはありませんか?

  • 褒められても「このくらい当然」と思ってしまう
  • 小さな失敗でも、いつまでも自分を責める
  • 休んでいると、何かしなければと落ち着かなくなる
  • 人に頼むより、自分でやった方が早いと思う
  • 頑張っているのに、突然怒りが爆発することがある
  • 思うような結果が出ないと、すべてが嫌になる

いくつか当てはまった方は、次の3つの問いを、自分に重ねながら読んでみてください。

Q1.なぜ、いつも完璧でいなければと思ってしまうのでしょうか?

A.「できる自分」でいることで、安心や居場所を得てきた経験が関係しているのかもしれません。

例えば、子どもの頃。
テストで100点を取ると、親がとても喜んでくれた。

「さすが、うちの子ね」
「あなたは本当に優秀ね」
その言葉が嬉しくて、次も頑張った。

でも、80点だったときには、
「どうして今回はできなかったの?」
「もっと頑張れたでしょう?」
と言われてしまう。

すると、子どもは少しずつ考えるようになります。
「よい結果を出せば、認めてもらえる」
「失敗すると、がっかりされる」

そして、いつの間にか、
「できる私でいなければ、愛されない」
という思いが、心の中に育っていくことがあります。

私は、こうした子どもの頃の環境の中で身につけた考え方を「借り物のルール」と呼んでいます。

ヒーロー型の方は、このルールを守るために、ずっと頑張ってきたのかもしれません。

でも、大人になった今、
ひとつの仕事がうまくいかなかったからといって、あなたの価値がなくなるわけではありません。

誰かの期待に応えられない日があっても、あなた自身が劣った人間になるわけではないのです。

「できる私」でいることと、「私には価値がある」ということは、別の話です。

Q2.些細なことで怒りが爆発したり、突然すべてが嫌になるのはなぜ?

A.頑張り続ける中で、疲れや不満、不安に気づく余裕がなくなっている可能性があります。

例えば、職場での出来事。

あなたは、毎日たくさんの仕事を抱えています。
自分の仕事だけでなく、周りの人のフォローもしている。

本当は疲れているけれど、
「私がやらなければ」
「頼まれたからには、きちんとやらなければ」
と、頑張り続けています。

そんなある日。
同僚から、
「この資料、少し直してもらえる?」
と言われました。

普段なら、何でもないひと言です。

でも、その日はなぜか、強い怒りがこみ上げてきました。

「どうして私ばかり!」
「これ以上、何を頑張れっていうの!」
自分でも驚くほど腹が立ってしまった。

そして、後から、
「あんな言い方をするつもりじゃなかったのに……」
と、落ち込んでしまうのです。

怒りの奥に、別の気持ちが隠れていませんか?

このとき、本当は何を感じていたのでしょう。

「もう疲れた」
「少しは誰かに助けてほしい」
「私だって、頑張っていることをわかってほしい」
そんな気持ちがあったのかもしれません。

でも、ヒーロー型の方の中には、弱音を吐くことや、人に頼ることに抵抗を感じる方もいます。

「疲れた」と言う前に、もう少し頑張る。
「助けて」と言う前に、自分で何とかする。
その繰り返しで、心や体の負担が大きくなってしまうことがあります。

すると、普段なら受け流せることにも、強く反応してしまう場合があるのです。

また、頑張り続けても思うような結果が出ないと、
「こんなに努力しても意味がない」
「もう何もしたくない」
と、気力を失ってしまうこともあります。

ただし、突然の怒りや強い絶望感には、睡眠不足、ストレス、心身の不調など、さまざまな要因が関係します。

すべてをヒーロー型の特徴だけで説明できるわけではありません。
強い落ち込みや無気力が続く場合は、医療機関などに相談することも大切です。

頑張ることが、いつの間にか義務になっていませんか?

ここで、ひとつ考えてみてほしいのです。

「私は頑張りたいから頑張っているのかな?」
「それとも、頑張っていない自分が怖いのかな?」

頑張ることが好きなのと、頑張らずにはいられないのとでは、心の負担が違います。

もし後者だとしたら、今のあなたには、さらに努力することよりも、少し休むことが必要なのかもしれません。

Q3.「完璧でなくていい」とわかっていても、頑張ることをやめられません。どうしたらいいですか?

A.頑張ることをやめるのではなく、「頑張り方を自分で選ぶ」練習から始めてみましょう。

完璧を目指して努力することは、悪いことではありません。
目標に向かって頑張る。
責任を持って仕事をする。
自分の力を伸ばそうとする。

それは、あなたの大切な強みでもあります。

だから、無理に頑張らない人になろうとする必要はありません。
ただ、どんなときにも100点を目指していたら、心も体も疲れてしまいます。

例えば、こんな小さなことから始めてみませんか。

① 今日は80点で終わらせてみる

すべてを完璧に仕上げようとせず、
「今日は、ここまでできれば十分」
と、自分で区切りをつけてみる。

もちろん、仕事の内容によっては高い正確性が必要なこともあります。
でも、すべての場面で同じ力を使う必要はありません。

② 「疲れた」を、なかったことにしない

「まだ頑張れる」
と思ったときこそ、

「でも、疲れていないかな?」
と、自分に聞いてみてください。

疲れを感じることは、弱さではありません。
休息が必要だと気づくための、大切な感覚です。

③ ひとつだけ、人に頼んでみる

「自分でやった方が早い」
と思うことでも、誰かにお願いしてみる。

最初は落ち着かないかもしれません。

でも、すべてを一人で背負わなくてもいいと経験していくことが、心の余裕につながる場合があります。

大切なのは、頑張れる自分を否定することではなく、頑張らない選択もできるようになることです。

ピエロ型とヒーロー型——違う役割を担ってきた二人

前回お話しした「ピエロ型」は、家族の空気を和ませる役割を担ってきた方でした。

一方、今回の「ヒーロー型」は、成果を出し、期待に応える役割を担ってきた方です。

ピエロ型
「私が笑わせれば、みんなが安心する」
そのために、自分の本音を後回しにしてしまう。

ヒーロー型
「私が頑張れば、みんなが安心する」
そのために、自分の疲れや限界を後回しにしてしまう。

役割は違っても、共通していることがあります。

それは、自分の気持ちよりも、家族の中で求められる役割を優先してきた可能性があるということです。

でも、大人になった今も、その役割を続けなければならないわけではありません。

ピエロ型の方は、無理に笑わせなくてもいい。
ヒーロー型の方は、いつも成果を出さなくてもいい。

どちらも、自分の気持ちを大切にする生き方を、これから選んでいくことができます。

「頑張れない私」にも、居場所をつくってあげませんか?

ヒーロー型の方は、これまでたくさんのことを成し遂げてきたのかもしれません。

家族の期待に応えてきた。
仕事で責任を果たしてきた。
誰かのために、努力を重ねてきた。
その頑張りを、なかったことにする必要はありません。

でも、これからは少しだけ、違う自分にも目を向けてみてほしいのです。

疲れて、何もしたくない自分。
思うようにできなくて、落ち込む自分。
誰かに助けてほしいと思う自分。
そんな自分も、あなたの一部です。

「頑張っている私」だけでなく、「休んでいる私」にも、居場所があっていい。

そう思えるようになったとき、頑張ることは、誰かに認めてもらうための義務ではなく、自分が選べるものになっていくのかもしれません。

これからは、誰かの期待に応えるためだけでなく、あなた自身が望むことのためにも、その力を使ってみませんか。

あなたは、何かを成し遂げた日だけ、大切な存在になるわけではないのです。

「もっと頑張らなければ」と思い続けてきた方にとって、立ち止まることは勇気がいるかもしれません。

カウンセリングでは、頑張ることが当たり前になった背景を一緒に振り返りながら、無理をしすぎない生き方を探していきます。

ここでは、立派な自分を見せようとしなくても大丈夫です。
いつも頑張っているあなたの、誰にも話せなかった気持ちを聞かせてもらえませんか。

自分を味方に、わたしを大好きになる
つむぐ🍀こころLab

前回:第1回「ピエロ型」のアダルトチルドレンとは?
周りを笑わせ、場を和ませることで、自分の本音を後回しにしてきたピエロ型についてお話ししています。

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